2021年06月23日 更新
CYBERDYNE 株式会社(茨城県つくば市、代表取締役社長:山海嘉之、以下「当社」)が開発・製造する医療用 HAL®下肢タイプ(単脚モデル) (以下、「HAL(単脚型)」)について、脳卒中片麻痺患者の歩行能力などの運動改善を目的とする医療機器承認を目指す医師主導治験(以下、「本治験」)の解析結果を得ましたので、当社見解をお知らせします。
本治験は、2016年5月から2020年12月まで実施した脳卒中片麻痺患者52名を対象とした多施設共同、ランダム化、非盲検比較対照試験であり、HAL(単脚型)を装着した歩行プログラムによる下肢体幹運動能力改善効果について、本機器の非装着による歩行獲得を目的としたリハビリテーションプログラムを対照として、その有効性および安全性を検証する医師主導の治験です。
本治験の歩行機能改善効果の重要な評価項目である6分間歩行距離について、治療前からの変化量を解析した結果、HAL(単脚型)治療ならびに通常歩行リハビリテーションの有効性を適切に比較できると考えられる集団(評価項目の計測に大きな影響を与えうる有害事象を経験した被験者を除外した集団)に対する追加解析において、HAL群の優越性を示す統計学的な有意差が認められました。
なお、本治験で予定されていた主要評価項目である10m最大歩行速度は、その評価結果にバイアス影響(※)が懸念されるため、HAL治療による歩行機能の改善効果を評価する有効性指標として適切でなく、副次的評価項目である6分間歩行距離の評価結果にはバイアス影響は少ないことから、本治験の目的であるHAL治療と通常歩行リハビリテーションによる歩行機能改善効果を比較評価するのに適していると考えられます。
当社は、本治験において十分な安全性も確認できたことから、今後、本治験の結果に基づき、当局(PMDA)と協議して、日本における脳卒中患者に対する医療用HALの製造販売承認申請の準備を進めてまいります。また、本治験の結果は、諸外国での医療保険の申請にも有用なデータになると考えています。
※本治験でのバイアス影響に関する説明:
本治験実施中に、主要評価項目である10m最大歩行速度の歩行機能改善効果の評価にバイアス影響を及ぼすことが懸念される事態が生じました。これは治験計画時には予見できなかったものであり、解析後の報告により明確になりました。10m最大歩行速度における2群間の統計解析において、割付け群内の変化量の分散が大きくなる等のバイアス影響を検討すべき事態と考えました。このバイアス影響の要因の一つとして、本治験の二次登録の選択基準において「前観察期の最終計測時における10m最大歩行速度が30 – 60m/min」の範囲内の患者に限定されたことにより、選択方法が主要評価項目と同一となったため、選択バイアスと評価バイアスが同時におきた可能性が推測されます。結果的に、本治験における10m最大歩行速度テストでは歩行機能改善効果を適切に評価しえないと考えられます。なお、この10m最大歩行速度テストにおいて、このバイアス影響が懸念されるなかで、対照群に対するHAL群の優越性は認められたものの、本治験の症例数では統計学的な有意差を十分に示すに至っておりません。
一方で、本治験において、6分間歩行距離測定は、二次登録の組入基準にはないことから、評価項目として選択バイアスおよび評価バイアスが起きにくく、片麻痺患者の歩行機能改善効果を評価できるという意味において、より適切であると考えられます。
【本件に関するお問い合わせ先】
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