2021年07月21日 更新
CYBERDYNE株式会社(茨城県つくば市、代表取締役社長:山海嘉之、以下、「当社」)は、緩徐進行性の神経筋難病患者に対する医療用HAL®︎下肢タイプの医師主導治験(NCY-3001試験)の結果について、治験調整医師である中島孝医師(国立病院機構新潟病院 院長)を責任著者とする論文 “Cybernic treatment with wearable cyborg Hybrid Assistive Limb (HAL) improves ambulatory function in patients with slowly progressive rare neuromuscular diseases: a multicentre, randomised, controlled crossover trial for efficacy and safety (NCY-3001)” が、国際医学ジャーナル「Orphanet Journal of Rare Diseases」に2021年7月に掲載されたことをお知らせいたします。国立病院機構新潟病院、国立病院機構徳島病院、国立精神・神経医療研究センター、自治医科大学、京都府立医科大学、国立病院機構大阪刀根山医療センター、東京女子医科大学、国立病院機構医王病院、筑波大学のチームからなる多施設共同の治験成果です。
当社は、今後も、本論文を諸外国における保険収載などの各種手続きにおいて、標準治療として説得力の高いエビデンスとして活用してまいります。
【論文のURLリンク】
https://ojrd.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13023-021-01928-9
(注記)本ジャーナルはOpen access journalとして、本論文は、Creative Commons Attribution 4.0 International Licenseに基づいてライセンスされています。URL再配布の際には、原著者と出典の適切なクレジットを表示し、Creative Commonsライセンスへのリンクを提供(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)してください。なお体裁など変更を加えた場合にはそれを示す限り、媒体の変更、配布も許可されています。
【論文の概要について】
HALの有効性および安全性を検証するため、介助や補助なしで10mを歩行できない18歳以上の緩徐進行性の神経筋難病患者(※1)を対象に、無作為化比較対照クロスオーバー試験を9施設にて実施した。主要評価指標は2分間歩行距離、副次評価指標として10m歩行速度、徒手筋力テスト(MMT)のほか複数の機能評価を行った。また有害事象や不具合、エラー発生についても評価した。
30例が2群(A群、B群)にランダム割付され(最終的にはA群13例、B群11例が解析対象)、HAL治療(HAL及びホイスト使用)と対照治療(ホイスト使用)をクロスオーバー形式で実施した。40分間の歩行プログラムを9回実施し(※2)、両群の有効性を比較した結果、主要評価指標である2分間歩行距離において、HALによるサイバニック治療の有効性は、対照治療に比べて10.066%と著しく改善し、統計学的に有意であった(95%信頼区間 0.667 – 19.464; p=0.0369)。副次評価指標ではMMT合計スコア、10m歩行テスト時のケイデンス(歩行率)において有意な改善が見られた。有害事象は、軽度から中度の筋肉痛、背部痛や接触部の皮膚トラブルのみであり、容易に治癒した。
結論として、難治性かつ進行性の神経筋疾患患者に対して、新治療機器であるHALによる治療が従来治療よりも高い有効性と安全性があることが証明された。
(※1)進行性神経筋難病:脊髄性筋萎縮症(SMA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、シャルコー・マリー・トゥース病、遠位型ミオパチー、封入体筋炎、先天性ミオパチー、筋ジストロフィー
(※2)本治験後に実施された医療用 HAL®下肢タイプの使用成績調査においては、1回の治療クール(9回の治療)による改善の後に、しばらく期間をあけながら複数回の治療クールを行なった場合には、さらに良い改善が示され、3.5 年間経過した状況でも、進行性の神経・筋難病患者の歩行機能が治療開始前の水準を上回っている結果が得られております。
<本論文の意義について>
本論文は、2013年3月から2014年8月にかけて実施された医師主導治験(NCY-3001試験)の詳細結果を正式に公表するものです。当該治験の結果を用いて、これまで当社は、重要なマイルストーンを達成することができました。
・日本における新医療機器としての製造販売承認取得 2015年11月
・日本における新区分での医療保険収載の獲得 2016年4月
・欧州におけるMDD認証の適応拡大 2016年5月
・米国における医療機器の市販許可範囲の適応拡大 2020年10月
また、医療用HAL®︎下肢タイプの使用成績調査(実施期間:2015年11月26日〜2020年11月25日)においても、本論文結果を裏付けるデータが得られました。このことからも、本論文に記された治験が実際の臨床使用を精度高く想定し実施されたことが分かります。世界的に有効な治療法が確立されていない進行性難病の標準的な治療法として、この度掲載された論文を営業活動や、保険収載などの各種手続きに活用することで、各地域における医療用HAL®︎の展開を加速させると共に、HAL®︎によるサイバニクス治療を神経筋難病に対するグローバルな標準治療とする取り組みをさらに進めてまいります。
<国立病院機構新潟病院院長 中島孝医師のコメント>
無作為化比較対照試験を製造販売承認申請目的で行うことを治験と言い、新医療機器を評価する際に最も重要な科学的な方法である。本治験により、従来、機能回復が決して望めないと考えられた進行性神経筋難病(※1)に対して画期的な有効性と安全性が検証された。この治験結果に基づき、神経可塑性や機能再生に関する新らたな医学概念が開拓されたため、学術論文の作成および審査には大幅な期間を要した。今回、国際的な有力雑誌により厳正に審査され、論文がアクセプトされたことで、HALによる治療法が完全にエビデンス化された。最も治療法開発が難しいと言われている本医学領域においてHALの性能が証明されたことから、国際的な医学会レベルで治療法が改訂され、HALの標準療法化が加速される。さらに、現在注目されている先端的医薬品とHALとの複合療法の新たな取り組みに向けた画期的な研究成果と位置づけられる。
(※1)進行性神経筋難病:脊髄性筋萎縮症(SMA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、シャルコー・マリー・トゥース病、遠位型ミオパチー、封入体筋炎、先天性ミオパチー、筋ジストロフィー
なお本治験の計画、実施において下記補助金が使用されました。
・難治性疾患等克服研究(厚生労働省科学研究費補助金 2012 – 2014)
希少性難治性疾患-神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験の実施研究
・難治性疾患実用化研究事業(AMED 2015 – 2017)
希少難治性脳・脊髄疾患の歩行障害に対する生体電位駆動型下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)を用いた新たな治療実用化のための多施設共同医師主導治験の実施研究
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