2016年11月07日 更新
当社は米国FDA(食品医薬品局)との協議の結果、医療用HAL®(※1)によるサイバニクス技術を利用した脳・神経系の機能改善・機能再生治療の革新性に関して、FDA側の理解が深化したと判断し、他に類のない新しいロボット治療機器であることを識別可能な形式での承認取得に向けた再申請手続きを開始しました。
当社は従来、FDAに対して510(k)プロセス(クラスⅡ)で医療用HAL®の医療機器の承認申請手続き(米国時間で2015年6月22日提出)を行っていました。医療用HAL®は、脳・神経系信号を活用した能動的な随意運動によって機能改善・機能再生を促す治療を目的としていますが、FDAでは、下肢に装着する機器という外観的な理由等から、患者の移動支援等、本質的な使用目的が異なる受動的な電動装具と同じ区分で審査が進められてきました。
当社は、米国における医療機器承認取得後の事業展開を見据え、これまでFDAに対して医療用HAL®の他に類のない革新性(脳・神経系から筋への意思伝達信号(生体電位信号)を検出・処理し、HAL®のアシストで実現される随意運動を介して末梢から中枢へと体性感覚神経情報をフィードバックすることによって、アクティブに神経接続状態を改善・再生しようとするロボット治療機器であるという革新性)の説明を継続してまいりました。この度、FDA側の理解が深化したと判断して、他に類のない新しいロボット治療機器であることを識別可能な形式での承認に向け、2016年11月4日(米国時間)に、Pre-Submission(※2)︎を提出するに至りました。
「医療用HAL®」は、2016年10月現在、日欧で医療機器として認証・承認されています。ドイツでは公的労災保険の適用、日本では公的医療保険の適用にもなっており、日欧で治療に用いられています。さらに、ドイツにおける公的医療保険についての手続きが進んでいるほか、日本における承認範囲・適用範囲を拡大するための治験や脳卒中患者等を対象にした治験、及び再生医療や医薬品との組み合わせによる新たな医療技術の研究開発も始まっています。医療用HAL®は脳・神経系と筋骨格系の両方の情報を収集、評価しながら患者を治療することを可能にするため、新たな医療技術のプラットフォームとなることが期待されています。
【(※1)医療用HAL®について】
「医療用HAL®」は、2013年に脳・神経・筋系疾患患者の治療を行う世界初のロボット治療機器として、欧州の医療機器認証(Notified Bodyによる医療機器指令への適合;医療機器CEマーキング認証)を受けました。ドイツでは、脊髄損傷等の患者を対象とする治療に対して、その費用全額が公的労災保険の適用となっています。日本では、緩徐進行性の神経筋難病疾患(脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、シャルコー・マリー・トゥース病、遠位型ミオパチー、封入体筋炎、先天性ミオパチー、筋ジストロフィー)患者の治療のための医療機器化を目的とする医師主導治験を経て、2015年11月に医療機器として薬事承認、2016年4月に公的医療保険の保険収載金額が決定となりました。
【HAL®について】
HAL®は、装着者の脳・神経系からの動作意思を反映した微弱な生体電位信号で機能するサイバニック随意制御系、姿勢や重心バランス等の装着者の動作情報を人工知能処理し機能するサイバニック自律制御系、装着者の人間特性に適応調整されるサイバニックインピーダンス制御系、及び、これらを組み合わせたサイバニックハイブリッド制御系等で構成される革新的サイバニックシステムです。脳・神経系からの指令信号を活用するHAL®を装着することで、動作意思に従った随意運動を実現すると同時に、随意運動を介して感覚神経系信号が脳へとフィードバックされます。これにより、装着者の脳・神経系と身体との間にHAL®が介在することでインタラクティブなバイオフィードバック(iBF: interactive BioFeedback)が構築され、脳・神経系の適応・再学習、身体機能の改善・再生が促されます。
【(※2)︎ Pre-submissionについて】
申請者からFDAに対して書面もしくは対面会議や電話会議の議事録という形でのフィードバックを求める正式な要望書です。申請者が、具体的な質問に対するFDA見解を必要とする場合に実施することが推奨されている手続きです。
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